【取材メモ】

フルタ丸の次回公演に向けた取材で長野県に来ている。

山間の町だ。

 

調べたかったことを調べるのが取材だろうか。

未知との遭遇こそが取材だろうか。

 

昨晩、窓を開けたまま眠ってしまった。

長野県のひんやりと冷たい空気が気持ち良かった。

起きて、むくむくとパソコンに向かい始めて気が付いた。

部屋に大きなスズメ蜂が2匹も進入している。

ブンブンうるさい。

というか、刺されたら死ぬ。

スズメ蜂に2回連続で刺されたらショック死すると子供の頃に言われた。

部屋にあった靴ベラで2匹をあっけなく殺生。

僕の動きは冴えていた。罪悪感が薄い。

きっと東京にいる時とは、感覚が異なっている。

見知らぬ土地というのは、そのへんの感覚さえも麻痺させる。

 

昨日の夕暮れ、山間の道を歩いていたら、大きな山を覆う大きな雲が現れた。

山はあっという間に拡大した雲に飲み込まれてゆく。

しかし、山はその雲を受け入れていた。

飲みこまれることを受け入れる。

雲も飲みこむことに遠慮や躊躇がない。

 

全力で飲みこみ、全力で飲みこまれる。

 

男女の性行為を思わせる、自然の性的なやり取りを見てしまった気がした。

僕はナンダカ恐くなってしまい、歩くスピードを速めた。

 

これは取材メモである。

 

        <2011年9月14日 5時54分 長野県のホテル>

【青春(せいしゅん)】

青春の正体が分からずに生きてきた。

その尻尾が何度か見えたことはあったが、すぐにどこかへ行ってしまった。

正直分らないままである。

皆さんに青春はありましたか?

それは汗を伴いましたか? それは涙ではなかったですか?

青春は汗も涙も要らないものだということを誰か証明してもらえませんか?

そんな人がいたら、そんな宗教があったら僕に紹介して下さいよ。

証明が不可能であれば、僕は汗と涙が青春であるという事実にもっと首を締められながら生きて行く。汗と涙を分泌しなかった代償は大人になっても払い続けてる。色んな青春のカタチをしたものを集めながら生きて来た。音楽、映画、小説。地に膝をついて、かき集めながら生きて来た。でも、それは全部借り物であって、僕の青春じゃなかった。誰かの青春は僕の青春にはなってくれなかった。そこには圧倒的な距離感があった。ヤングジャンプの巻頭グラビアで

微笑む広末涼子と、それを眺める僕との距離感に似ていた。

「青春なんてどうでもいいじゃねぇか」と言う人もいる。

どうでもいいやと思いたい自分もいる。思えたらどれだけラクだろう。

高校時代の担任よ、どうしてこの仕組みを教えてくれなかったんだい?

どうして「数学」や「日本史」の代わりに「青春」という授業がなかったんだろう。

バカみたいに白球を追い掛けている高校球児を見ていると、たまらなくなる。 

        <2010年8月7日 19時26分 下北沢の事務所>

 

【ジブリ(じぶり)】

ジブリ作品を観ていると、懐かしいのか何なのかよく分らない種類の涙が出そうになる時がある。僕も充分大人なので我慢するから泣かないけど、自信はない。いつか我慢できない日が来たら泣いてしまうと思う。何でもない街の風景のシーンとか、何でもないキャラクターのしぐさに目頭が熱くなってしまう。そういった「何でもない」部分の凄さ。ジブリ作品の魅力はそういった細部に宿りまくっている。そして、その細部に何故惹かれるのか、僕らはそれを上手に説明する言葉を持ち合わせていない。だから何回も観るし、誰かに薦めることで説明の代わりにしたがっている。だって、上手く説明できないんだから。

 

「私、ジブリ好きなんだよね」

「えっ、俺も好きだよジブリ! ジブリの中でどれが一番好きなん?」

 

この会話はたぶん日本中のコンパでさんざん繰り返されて来たはず。

僕も聞かれたことがあるし答えたこともある。けど、自分からその質問を誰かに投げ掛けたことは一度もない。なぜなら「そうゆうことじゃないんだよなー」という宮崎駿の声が聞こえて来そうでビビっているから。

 

ジブリ作品の中で優劣を付けるということは

「読売ジャイアンツと浦和レッズってどっちが強いんですか?」

ぐらいの愚問ではないかと思っている

のですが、宮崎駿さん、僕は間違っているでしょうか?

あなたのモノを創る姿勢に心酔し過ぎでしょうか?

 

そう思ってしまうのは、あなたが4年に1本しか映画を創らないからです。

4年分の魂が込められた作品を僕は好意的にしか受け取れない。

もうそれはそれだけで豊かであり価値のあることだと思ってしまうのです。

僕は冷静な判断と批評が下せる批評家にはなれそうにない。なりたくもない。

 <2010年5月8日 11時49分 馬事公苑のカフェ>


 

【成城SPA(せいじょうすぱ)】

成城SPAという温泉娯楽施設がある。住処のある千歳船橋の駅からシャトルバスが出ていて、ものの5分もあれば行くことができる楽園。僕にとっての楽園はタヒチにもドバイにもなく、間違いなく成城SPAにある。以前、脱衣所で「俺は都内の色んな温泉施設に行ったけど、ここが一番だよ」と友人に激プッシュしている中年がいた。フルタ丸公演が終わった次の日、出張の仕事から帰った次の日、とにかく非常に疲れた次の日に行くことが多い。休むことが下手だと自認している僕はココに来て、「つぼ湯」という一人用の露天風呂温泉に五右衛門のごとく浸かり空を見上げる。俗に言う、サイコーのひととき。正直、温泉に入ったからと言って、疲れが急激に取れるわけじゃない。そんな簡単に疲れが取れたら逆に怖い。そんなお湯、ぜったい何か入ってるぜ。重要なのは「あー俺、今休んでるんだなぁ」という実感。この実感シグナルを脳に送るための入浴なんである。話は逸れるが、この施設の1階はユニクロになっている。都内最大級の取り揃え&敷地面積を誇る店舗。ユニクロという会社は世界中に11人のスーパー店長と呼ばれる店長がいると言われている。店長は店舗の数だけいるが、その11人は重要な店舗に配属されるという。その11人のスーパー店長の内の1人が、この成城SPA一階のユニクロ店舗にいるらしい。そんなこんなで、おススメの楽園。

<2010年5月6日 20時52分 馬事公苑のファミレス>