『半七捕物帳を歩く ぼくの東京遊覧』田村隆一著・朝日文庫

岡本綺堂の名作『半七捕物帳』の事件現場を中心に、田村隆一と写真家・高梨豊が、へべれけになりながら、現代の東京、戦前の東京、永井荷風が『日和下駄』に書きとめた震災前の東京、そして、旧幕の江戸という、同じ土地の異なる位相を縦横無尽に歩いて描いた、詩人・田村隆一の東京地図。

肝心の『半七捕物帳』の引用が冗長でつまらないことや、高梨豊が撮った写真が何故か掲載されていないという問題点はあるものの、

 

「一ツ木、六本木、溜池……赤坂という名前そのものが関東ローム層の名残をとどめている。

 関東ローム層の上には、ペーブメント、貧弱な並木、見せかけだけのアメリカ式高層ビル、その裏手は、八ツ手と三毛ネコだけが生きている路地。

 関東ローム層を、掘りに掘って、地下鉄が走っている。ビルといったら銀行と商社。」

 

と、赤坂界隈の地名が、現在のイメージとちがって、いかにわびしいものであるかの指摘は、言葉にいきた田村隆一ならでは。

田村隆一の文章としては、中の下だが、久々に東京を歩きたくなる。考えて見れば、『歩行』に「歩く」ページがないというのも寂しい。今月中にふらふらと東京を歩いて参ります。乞うご期待!