『新宿熱風どかどか団』椎名誠著・朝日文庫

『哀愁の町に霧が降るのだ』にはじまる、自伝的実録大河小説の第五弾。

とはいうものの、いわゆる小説の体裁はとっていない。

実に自由。

次回が最終巻になる予定らしいが、まったくそのような気配がしないのが小気味良し。

椎名誠の魅力とは、人の数ほどあるのだろうけれど、僕が好きなのは、まずもって、料理で、

 

「タマネギを炒めてアサリの缶詰にトマトをたしてよく煮こみ、ほどよく茹であがったスパゲティにそれをかける。あっつあっつのうちにがしがし食べる」

 

みたいに、読みながら、実にお腹に訴える文章を書くところにある。そして、実際につくってみると、アサリの缶詰は351円と案外高いのだけれど、うまいのもいい。

半径3メートルの世界を描かせたら、椎名誠に勝る作家は、そう見当たらない。

椎名誠の描く世界の魅力とは、あまりにも普遍的で、身の回りに転がっていそうで、見当たらないものに、目を向ける、眼差しの優しさなのだろうか。