『塵に訊け!』ジョン・ファンテ著・DHC

色川武大に、深沢七郎が必要だったように、「安ワイン派」のチャールズ・ブコウスキーには、ビート文学の先駆者、ジョン・ファンテという作家は、なくてはならない存在だった。

ファンテは、略歴、作家としての活動、作品、どれをとってもブコウスキーを彷彿とさせる。それは当然で、ブコウスキーは、この作品で、彼の「魔法」をみつけたからだ。ブコウスキーがどれほど、ファンテにいれこんでいたかは、彼が書いた序を読めばよくわかる。

「俺にとって、この本の出だしは野蛮で強烈な奇跡だった。(中略)読み終えるずっと前から、この本の著者は他の作家とは全然違う書き方を編み出しているとわかった。題名は『塵に訊け!』で、著者の名前はジョン・ファンテだった。彼は俺の書くものに生涯の影響を与えた」ではおさまらず、「ファンテは俺の神様だった。神様はそっとしとくべきだ、訪ねていってドアを叩いちゃいけない」みたいに、ブコウスキーらしいチャーミングな書き方で、賛辞がとまらない。

ブコウスキーがお世辞をいったりしない人間であることは、一作でも彼の小説を読んだ読者にならわかるはずだ。

本書は、ジョン・ファンテ自身とおぼしき、アルトゥーロ・バンディーニという駆け出しの小説家が小説家になるまでを、屈折した欲望と、文学への理想を交差させながら、1939年の南カリフォルニア、ロサンゼルスを舞台に描いている。

「世界は塵でできていて、いつかは塵になる。俺は朝のミサに通い始めた。懺悔をした。聖体拝領を受けた。俺は小さな木造の教会を選んだ。ずんぐりしていて頑丈で、メキシコ人地区にあった。そこで俺は祈った。新しいバンディーニ。ああ、人生!」

心を叩きつけて書いている。