『時代と人間』堀田善衛著・徳間書店

『時代と人間』堀田善衛著・徳間書店

小林信彦が30代を通して、小林秀雄にすがりつくように読みふけったように、宮崎駿にとって、堀田善衛は、「海原に屹立している巌のような方だった」。

堀田善衛は、「考える人」として、よく知られていると思うし、また『広場の孤独』のような稠密な孤独について描いた作家でもある。

『方丈記』を美しい散文としてではなく、乱世を描いたドキュメンタリーとして読み直した『方丈記私記』や、超現実の言語芸術、『新古今和歌集』を編纂した藤原定家の『明月記』を鎌倉時代の雑誌編集者のような目で読み込んだ『定家明月記私抄』など、その透徹した視線は、古典を古典として終わらせない、墨が乾かぬ現実として捉えられている。

本書は、いままで、堀田善衛が書き続けてきた人物についての考察を、鴨長明、藤原定家、法王ボニファティウス、モンテーニュ、ゴヤを中心に、NHKの講座用に書き下ろした一冊。

モンテーニュをミシェルさんと呼ぶ、親しみ方に意表をつかれる。モンテーニュに「ミシェルさん」などと呼びかけるひとは、この人が最初で最後に違いない。名著。