映画『あがた森魚ややデラックス』竹藤佳世監督

映画『あがた森魚ややデラックス』竹藤佳世監督

玄関に封筒が落ちていた。郵便受けのような瀟洒なものはないから、必然的に郵便物はすべて地面に散らばってしまう。見覚えのない字だなあと思って、裏返すと竹藤さんだった。

竹藤さんは、映画監督で、実験映画のひとである。

自分が上京して、一番はじめにやろうと思ったことは、映画を撮ることだった。イメージ・フォーラムのワークショップに参加し、そこで8ミリ映画を、映画とは呼べないか、のようなものを撮った。僕は、映画も文学も遅咲きだったから、当然、ゴダールも知らなければ、デレク・ジャーマンも知らない。イメージ・フォーラムの扉に飾られている、寺山修司という文字をみて、誰だろうという感興すら湧かず、講師としてやってきた三池崇史監督に、ただただひたすら熱狂していた。たしか、「殺し屋1」 を撮られていたころのことだと思う。場違いなことこの上ない。

にもかかわらず、性懲りもなく、イメージフォーラムに置いてあったチラシに手を出した。映画の撮り方を教授していただけるだけでなく、実際に映画が撮れて、そして、その映画を映画館で上映してくれるという、「!」が三つぐらいつくぐらいの眉唾もののチラシだった。そのチラシに逆上した僕は、早速申し込み用紙に記入し、投函した。講座は、東中野の青林堂の二階を借りて行われ、その眉唾ものの企画を主宰していたのが、パウダールームというイメージフォーラムの卒業生を中心にした映像作家集団で、その代表が竹藤佳世さんだった。

よく考えると、そのとき僕ははじめて作家というものをはじめて目の前にして、知らぬうちに、どっぷり影響を受けていたのかもしれない。

映画を撮り終えるまでが映画ではなくて、映画をお客さんに観てもらうまで責任をもつことが、映画づくりであることを、この短い授業で教えていただいた。 今なお、何の関係もない僕にまで、お知らせを送り続けてくださるのは、一人でも多くの人に自分の作品をみてもらいたい、という作家としての矜持なのだと思う。

竹藤さんの「骨肉思考」「彼方此方」「殻家KARAYA」「カラコワシ」など、一連の作品は、DVD化されていないため、劇場でしか見られないが、もしチャンスがあれば是非ご覧ください。

「骨肉思考」は妊娠されていた当時の自分にカメラを向けることからはじめた半分ドキュメンタリーの映画である。もう7、8年前にみた映画だから、極めて曖昧模糊とした記憶でしかないが、胎内の娘さんの心拍音を録音し、BGMで流していたのではなかったか。非常に鮮烈な印象だった。

その作風から、フィクション・ドキュメンタリーの境界を越えた独特のスタイル、と紹介されることが多いが、半分あたっていて、半分は的外れではあるまいか。「彼方此方」という、ねっとりとからみつく母と娘の濃厚な女の物語もある。実験映画だけではなくて、こういった人間の性という、抗い難いどうしようもないものも撮られるのかと思い、その領域の広さと深さに唖然とした。 

最近は、若松孝二監督作品(『17歳の風景』『実録・連合赤軍』)や河瀬直美監督作品(『垂乳女Tarachime』『殯の森』)などにも参加し、活動の領域を広げているが、やはり本領は自身の撮られる作品であろう。

「半身反義」から二年。待望の新作は、あがた森魚さんの日本全国67箇所ツアーという膨大な旅の軌跡をまとめたドキュメンタリー。

 

シアターN渋谷で11月13日まで絶賛上映中。

詳細は下記。

 http://www.yayadeluxe.com/index.html

見に行かなくては。改め、見に行きませんか?

 

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コメント: 1
  • #1

    五十嵐祭旅 (水曜日, 04 11月 2009 11:26)

    これ面白そう。
    これ行く。
    最近 あがた森魚と森田童子の区別がつくようになった。