『世にも奇妙な遺言集』ライアン・マッケイ&クリス・メイナード監修・ブルース・インターアクションズ

『世にも奇妙な遺言集』ライアン・マッケイ&クリス・メイナード監修・ブルース・インターアクションズ

歌舞伎町を歩いていると、磁石のように黒服が寄ってくる。一口に黒服とはいうものの、売り言葉が一人一人違う。

「おっぱぶ、いかがっすかー」

「どっすかー、乳首ダブルクリック」

「お待たせいたしました。二名様、キャバクラこちらです」

50メートル歩くだけで、このボキャブラリーである。まさか、乳首とダブルクリックをつなげてくるとは思いもしなかったし、まさか、並んでいない我々をつかまえて、お待たせいたしました、とは想像もつかなかった。会話の妙とはいわないまでも、座布団ぐらい差し上げたい。

本書は、作家、哲学者、詩人、政治家、軍人、画家などありとあらゆる人間の、最後の言葉を集めた、一種のアフォリズム集。この本が出色なのは、マルクスやワイルド、ヒューム、オーウェル、カフカなど錚錚たる面々にまじって、死刑囚の最後の言葉が数多く書き留められているところにある。

「さあ、見物の皆さん、これから焼きりんごが出来るのをお見せしよう!」

 ……ジョージ・アッペル:電気椅子刑

みたいに、ザ・アメリカみたいなものから、歌舞伎町の黒服を凌駕する

「釣りに行くほうがいいな」……ジミー・グラス:電気椅子刑

みたいにちょっと渋いのまで、30人近くの死刑囚の言葉を載録している。

一番トンデルのは、まさかのアレン・ギンズバーグ。

「じゃーねー」。

さすがビート詩人。