2010年

1月

30日

『物語の役割』小川洋子著・ちくまプリマー新書

『物語の役割』小川洋子著・ちくまプリマー新書

もし、宇宙人がいるとして、本を読んでいる人間を見たらどう思うだろう?

 

「小さな箱型の紙の束を手に、ただじっと座っているだけで、あるいは寝転がっているだけで、時折、一枚紙がめくられる以外変化はなく、ただ静かに時間が過ぎてゆく。いくら辛抱強く待っていても、何か新しい製品が生み出されるわけでもない。一体何の得があって人間たちはこんな地味な営みをしているのか?」

 

こういうサン・テグジュペリみたいな、素敵な問いかけをしてくれる人がつまらない本を書くはずがない。じっと座って本を読む。そのときの人間の心がどれだけ劇的に揺さぶられているか、それは読んでいる当人にしかわからない。その経験は、数値にはおきかえられないし、目にも見えない。当人にしかわからない、かけがえのないものである。

宮崎駿は、何度も物語の役割について、「ファンタジーの力」という言葉を使って言及してきた。

僕にとって、読書が面白いというただ単純な事実は、どれだけ僕の行き詰った人生を助けてくれたか、それは筆舌につくしがたい。筆舌につくしがたいというのは、言葉の矛盾ではあるけれど、それは、読書の、もっといえば、物語の役割の核心にふれている。

「小説というのは言葉で書いてあるのに、言葉にできない感動を与えなければいけない不思議なもの」だからである。

「何かが起こる。それを表現する。紙の上に再現する。これが言葉の役割です。言葉が最初にあって、それに合わせて出来事が動くことは絶対にありえません。ですから過去を見つめることが、私は小説を書く原点だと思います」。

というように、「言葉は常に後から遅れてやってくる」。

物語と真摯に向き合い、精力的に小説を書き続ける作家・小川洋子が、物語と創作、読書について語った、宝石箱のような一冊。