『アフターマン 人類滅亡後の地球を支配する動物世界』ドゥーガル・ディクソン著・今泉吉典監訳・ダイヤモンド社

5000万年後、人類が姿を消した世界には、一体どんな動物がくらしているのだろう。ディクソンは、現在の動物がたどってきた進化の過程をふまえて、未来の動物を想像した。

真剣に。

たとえば、系統が同じなら、極地近くに住む動物のほうが大きいというベルクマンの法則、まったく無害な動物が毒々しい装いをして襲撃者をやりすごすベーツ擬態など、適応、進化の収斂、そして放散という基本原理をその想像力にとりこむだけでなく、「自然は空白を嫌う」という物理の世界の法則にのっとって、人間によって占められていた生態的地位が、空白化した世界を、爆発的な繁殖から押し出される進化によって、新しい種が現れ、新しい生態系をつくりだすことを活き活きと描いている。

ハワイ諸島は、5000万年後、マントル、すなわち地殻運動によって、火山列島が生まれる。新しい島ができると、初めにやってくる脊椎動物は、ふつう鳥である。しかし、このバタヴィア列島にやってきたのはコウモリで、ガラパゴス島のフィンチよろしく、5000万年後、ハワイ諸島は、コウモリの島と化す。

耳と鼻葉を色鮮やかな花弁に擬態させたフローアー、後肢が肩越しに突き出して、手そのものの働きをし、哺乳類であろうと爬虫類であろうと、見境なく恐ろしい歯と鉤爪で襲い喰らう、森の中を金切り声を上げて徘徊するナイト・ストーカーなど、見るも恐ろしいコウモリ族が跋扈している。

背中に、交尾の際に精子を出すこと以外に生物としての機能がない雄をのせている、奇妙な鳥、メイトリアルク・ティナムや、尻尾に多数の剛毛を芯にした、落下傘のようなものをもった、小さなトガリネズミのような大きさのパラシュリュウなど、頁をめくるのが愉しい、奇想の図譜。

カラーのイラストが嬉しい。 

『鼻行類』、『平行植物』とともに、生物学の三大奇書と言われる。

序文は、動物学の泰斗、デズモンド・モリス。

興味本位にかかれた未来小説やSF漫画の奇怪な動物とは一線を画したリアリティは、まさに想像を絶する。