『ホームレス中学生』田村裕著・ワニブックス

いわずと知れた、お笑い芸人「麒麟」の田村裕のベストセラー。

映画公告の「家族解散」のイメージが強くて、ファンシーな家族が暴走するノン・フィクションかと思いきや、地味に重い。

母がまず、癌で倒れて亡くなり、父もまた癌になる。大手企業に勤めていた父は、リストラされ、癌からは立ち直るも、人生はたてなおせず、親戚縁者に金をかりてまわり、気がつけば、田村家は、つまはじきものに。

家財を差し押さえられて、一家離散の危機になっても、当然、手をさしのべてくれる血縁者はおらず、兄、姉、田村、それぞれが野宿というタフな生活環境に、いきなり放り出される。

奇跡的に彼らが助かったのは、困っている人を見て見ぬふりをしない、いまどき珍しい近所のおっさん、おばさん達の温かい力だった。

生活保護の手続きをとり、彼ら三人が、まがりなりにも、家をかりて生活できるようになるまで、陰に陽に見守り続けた。とはいうものの、生活は楽ではない。

1日300円の食生活はなみではなく、

 

「一口に味が無くなると言っても、簡単なものではない。」

 

空腹をまぎらわせるために、一口十分以上、一膳二時間ペースで咀嚼するのあたりまえで、その境地の果てにたどりついた、味がなくなったあとにもう一度味がかえってくるという、「味の向こう側」には、笑いをとおりこして、感動すらおぼえる。