『「結果を出す人」はノートに何を書いているのか』美崎栄一郎著・Nanaブックス

僭越ですが書評の前に、まずノート概論を。

 

ノートの使い方についての本が最近人気です。

書店のポップや本の腰巻を見てますと、まず、キャッチコピーが大体同じです。

集約すると、学生のノートと仕事のノートの使い方は違う、ということで、かいつまんでいうと、学生はノートを覚える(あるいは暗記する)ために書き、仕事のノートは忘れるために書く、ということです。

この、忘れるために書く、というのがポイントで、一見逆説的ではありますが、要は、やらなければいけないこと(いわゆるto doですね)、今すぐではなくてもやっておいたほうがいいこと、やると自分の為になりそうなこと、いきなりひらめいてしまったこと、など、頭の中には、整理されていない状態で、色々な思索が渦巻いています。

これを全部、ノートに書き出して、順位をつけ、また索引、見出しなどをつけてあげて、ノートに書きつけていく。そうすると、脳は、パソコンでいうなら、常に軽い状態をキープでき、発想が自由に、しかもなおかつ、スケジュール管理もできてしまう。

多分、どの本を手にとっても、こういうことが書いてあるはずです。

 

手帳ではなく、あえてノートでこれをやるメリットをあえて一つ上げるとするならば、それは安さです。B5サイズでも200円しない。同じサイズのダイアリーなら大体1600~数万円近くかかります。ノートで管理すれば、書いて書いて書き潰せる。そして、書いたものは、捨てなければなくなりません。

これはダイアリーでも同じですが、つまり、経験をストックすることができます。

同じ仕事をするにしても、自分の記憶を頼りにするのと、自分の経験を書いたノートがあるのとでは、よほど記憶力のいい人をのぞいて、多分、段違いでしょう。

 

ただ、問題は、どうやって、索引をつくるのか、になると思います。書く量が多くなればなるほど、索引が作りづらくなります。その理由は、一冊のノートにすべて書いてしまうと、本当にとりとめがないことになってしまうからです。

そこで、手段のひとつとして、何冊かのノートを使いわける。あるいは書く順番をかえたり(たとえば仕事は前から、プライベートは後ろから)、書く色を変えたり、付箋をつけたりと、さまざまな工夫がうまれます。書き方だけでなく、ノートのサイズ、内容(無地、罫線、方眼、特殊罫など)も重要です。

 

大きさによって書ける量が違うのは見ればわかりますが、では大きさによって何が違うのか?

あるメーカーのノート開発者に伺ったら、A5サイズが、発想をまとめるための適した紙の大きさなんだそうです。また、規格の大きさから外れた、コクヨのスリムサイズ、あるいはモレスキンのA5変形、E型という最近淘汰されつつある横型ノート、そしてそもそも日本特有の規格である六号サイズ(通称B5)など、あげればきりがありません。この中から、何を選び、どう使うのか?

それだけではなく、当然、ノートは書かれるもの、であるのですから、筆記具も重要です。

つまり、何で書くのか。万年筆なのか、ボールペンなのか、シャープペンなのか、鉛筆なのか。一口にボールペンといっても、インクが、ゲルなのか、油性なのか、水性なのか、特殊インクなのか、おそらく、人によってちがうはずです。

ノートの紙質ひとつとっても、結構種類があります。ほとんどが中性紙ですが、フールス紙や、帳簿紙、トモエリバー(紙の名前)、ライフのオリジナルペーパー、や千年ペーパーなど、あげればきりがありません。

 

何がいいたいのかといえば、ノートというのは実に奥が深くて、一冊一冊めくってみるだけで想像がふくらみます。僕がノート本について抱く、不満は、このノートの世界の楽しさに踏み込んでいないことです。

 

本書を一言でまとめれば、三冊のノートを使いこなすこと、です。

三冊のノートとは、メモノート、母艦ノート(メモノートを貼り付けたりするノート)、スケジュールノート、です。

あとは、誰と、どこで、何を、いつまでに、どうやるのか、というような入門講座が続くわけですが、もし、本当に生産効率をあげて、成果をだすためにスケジュール管理をし、アイデアを生み出そうとするならば、こうした本を読む必要は、個人的にはないと思っています。

 

必要なのは、自分が今まで書き溜めてきたノートを振り返ること、ではないでしょうか。

書き方をみれば、自分のくせがわかります。くせがわかれば、それをいかすことができます。

あとから書き込みを多くしていれば、コーネル大学ノートのような特殊罫も有効でしょうし、東大式みたく一日一ページの贅沢な使い方(経済効率からいえば、まったく贅沢ではないのですが)に変えるのも手ですし、思い切ってサイズを1サイズあげてみるのも手だと考えられます。

 

昨今のノートというのは実に工夫されていて、原稿用紙の罫が入った原稿ノート(縦書き)やコピーノート(横書き原稿タイプ)、マージン罫入りのもの、統計ノートに応用ノート、五線譜、英語、単語、ウォータープルーフな測量野鳥(方眼タイプもあります)、四コマ漫画のコマの入ったノートに、フィルムノート、見開き四日型の日記形式のノート、備忘録、フリータイプのカレンダー型のノートもあります。

用意された使い方だけがノートの使い方ではないはずです。 

第二次世界大戦前後、ノートの大きさの主流は、A5サイズでした。それが、今はB5になり、もしかすると、今後はA4やA6になっていくのかもしれません。

あらためて、一度、どっぷりノートの世界につかってみてはいかがでしょう。

案外種類があります!