『弥勒の掌』我孫子武丸著・文春文庫

『弥勒の掌』我孫子武丸著・文春文庫

大阪梅田本店のブックファーストをのぞいたら、とんでもない棚があった。それが本書の棚で、一冊一冊に、店員がつくったと思しき、

「予測不可能な驚天動地の結末。あなたも絶対にだまされる……(大意)」

という推薦文つきの黒い帯がまいてあったんである。

何十冊も!

この帯の背景には、まず本を読んで感動した書店員がいて、それを後ろから温かい目で見守っている店長がいたはずである、きっと。勝手な想像で恐縮だけれども、こういう夜鍋的情熱は看過できない。

たまたま一緒にいた「6号棟」同人の圭くんに聞いて見ると、やはり知っていたらしく随分前からあるよ、と教えてもらう。

奥付は、2005年4月単行本。

本書は、綾辻行人、法月綸太郎とならんで、京大新本格の一人、我孫子武丸の本格捜査小説である。
教え子に手を出して以来、家庭内別居状態が続いていた高校教師・辻と、愛する妻を殺され、汚職の疑いをかけられているベテラン刑事の蛯原の二人が主人公格で、二人の物語が交差しながらも物語が加速する。
辻は家庭内別居だった妻が失踪して保険金殺人の疑惑をかけられて途方にくれ、蛯原の愛した妻はある宗教団体にどっぷりはまっていた。
それぞれまきこまれた事件の先に、ある宗教団体の影があり、二人はひょんなことから「救いの御手」にそれぞれ別個にいきあたる。
「救いの御手」は、阪神大震災の前日に兜率天(とそつてん)から人間の世に下生(げしょう)したという、弥勒を中心とした新興宗教団体で、調べれば調べるほど、怪しい事件が浮き彫りになってくる。やり手のルポライターの力をかりて、事件の全容をつかみかかった矢先に、急転直下の展開をむかえる。
あらすじを書けば、多分こんな感じだと思います。
確かに「だまされ」ることには間違いはないが、しかしなあ、という気がしないでもない。
欲を言えば、伏線が単線すぎる。もっとだましてほしかった!
無念である。が、また、梅田本店のブックファーストにいってみよう。今度は何に帯をまいてくるか。愉しみが増えた。