『特別法第001条 DUST』山田悠介著・文芸社

『特別法第001条 DUST』山田悠介著・文芸社

二〇三二年の日本を描いた、戦うニートの物語。

「タカ派でならした小泉政権交代からニ六年」後の東京都新宿には、「球体型や、スプーンのような形をした奇抜なオフィス」がたちならんでおり、道路には、カプセル型の水素自動車が走っている。全てコンピュータが運転しているため、事故は起きないらしい。

携帯電話は、見違えるほどコンパクトになって、小型のチップを耳にいれ、ライターほどのリモコンをもつだけ。お金は、紙幣から、カードにかわり、街中に監視カメラがあふれている。

未来の世界を描くためには、それらしい荒廃や進歩を書く必要があるが、その点で、この小説は失敗している(現金で買えないという設定にもかかわらず、コンビニで一万円を使ったりしている。他にもあるが、ここでは書かない)。ただし、ディテイルが破綻していたとしても、それだけで小説のよしあしが決まるわけではない。

本書の題は、高齢化社会で労働力不足が深刻化する中、その上京を打開するために、日本国政府が打ち出した法案の名前、である。それが、棄民政策、で、一八歳以上の未就労、未納税者を流刑にし、500日間を無人島で暮さなければならない。無人島には、電気、ガス、水道、食糧はなく、棄民には、不要な人間が自然に死ぬのを待つ、という極めて残酷な死刑が待っているのだ。この特別法第○○一条、通称”ダスト”法には、当然抜け穴があって、免罪金を払えば、免れることができる。つまり、この法令が対象にしているのは、ニートとか、働きたくても働けない、そして、それをたすける人間のいない、孤独な人間なのである。

ゴミを棄てるように、無人島に投げ込まれた主人公たちは、にわかバトルロワイヤル的な境遇を生き延びる方法を模索し、他人の善意を喰い、略奪し、食べるものが尽きると、皆、死んだ人間を競って喰い始める。

刑期を終えて無人島からなんとか生き延びても、それで終りではない。工場で死ぬまで、部品として働き続けなければならないのだ。この淡々とした監獄は、多分、著者の実感ではあるまいか。

山田悠介の魅力は、描写力とか、設定とか、プロットではなく、単純に発想、この一語に尽きる気がする。

 

考えるところがあって、ニートものと呼んでいいのかどうかはわからないが、を集めて読んでいる。本書の広告を新聞で読んだときは冷や汗を書いたが、やはり考えることは皆微妙に違うようで、面白い。

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コメント: 1
  • #1

    ガン鉄 (月曜日, 22 10月 2012 00:23)

    こりゃー非常に面白い小説だったわい