『少年少女世界の大探検① コンチキ号漂流記』ハイエルダール著・あかね書房

『少年少女世界の大探検① コンチキ号漂流記』ハイエルダール著・あかね書房

イースター島や、タヒチ島、ファツ・ヒバ、サモア諸島などの南太平洋の島々の遺物と、ペルー・インカの遺物には共通点があった。そして、南太平洋の島々には、昔、彼らの祖先が海を渡ってやってきたという伝説が残されていた。

ノルウェーの人類学者・トール・ハイエルダールは、一つの仮説をたてた。

彼らは、はるかペルーから海を渡ってきた同じ一族なのではないか、と。その仮説を裏付けるように、今からおよそ400年前、スペイン人がはじめてペルーにやってきたとき、インカ帝国の原住民、インカ族は、大石像やピラミッドは自分たちが建造したものではない、といったという。これは、太陽の神の子孫だという、先住民らが残したものだと。

古い伝説によると、彼らは大昔に北からやってきて、インカ族に農業や生活の知恵を伝え、ある日、大きないかだに乗って、海にこぎだしていったという。

この仮説は、南米の古代民族は大海に乗り出す大船ももたず、航海術を知っていた証拠もなく、ゆえに、南太平洋の島まで多数の民族が移住できたはずがないとにべもなく退けられる。

なるほど、机上の空論では拉致があかないと直覚したハイエルダールは仲間を集めて、インカ人のいかだのスケッチをもとに、バルサの大木を切り出して、 リアナで結わえ、マングローブのマストで、当時のいかだを再現し、実際にたどり着けるかどうかを自分の肉体で証明しようと決心した。

1947年4月28日、ハイエルダールと五名の乗組員はペルーの海岸を漕ぎ出して、はるか南太平の島々をめざして、フンボルト海流を文字通り命がけで漂流する。本書は、およそ100日間にわたる漂流記である。

本書は、タイトルどおり児童版である。

装丁が夢と浪漫に彩られ、成人が携帯するには難しい問題を孕んでいるけれども、大変愉快。

モアイは昔、赤いかつらのような帽子をかぶっていた。それは、おそらく、コンチキの部下が赤い髪をしており、石像の顎がとがっているのは、彼らが顎鬚を伸ばしていたからだ、という指摘と、モアイの立て方など、図入りで説明しているのがわかりやすい。

デビルフィッシュ(タコ、イカ、大エイ、アンコウなど)の悪夢に怯えたり、かと思えば、サメの尻尾をつかんで遊んだり、果ては命がけで競泳してみたりと、時間を刻まれていない、冒険の記録がつづられている。

児童版とはいえど、生魚の肉から塩気のない水がしぼりとれることなど、漂流記の実践について具体的に語られている。とても恥ずかしい思いをして読了したら、想像通り、大人版があった。

筑摩書房の『世界ノンフィクション ヴェリタ』16巻がそれで、書名が『世界~』で、しかも著者名が登録されていないので、キーワードとしてひっかからない。もし図書館で、読まれる方がいらしたらご注意を。

海洋人類学とでも呼ぶべき、ハイエルダールは、ヘイエルダールとも表記され、他に、イースター島の秘密に迫ったノン・フィクション『アク・アク』社会思想社、などがある。