『月の影 影の海 十二国記』小野不由美著・講談社文庫 上・下

『月の影 影の海 十二国記』小野不由美著・講談社文庫 上・下

渡瀬悠宇の少女漫画『ふしぎ遊戯』(小学館・1992年)を想起させる、ハイファンタジー小説群。十二国記のほうが一年早いが、当初は連作としては発表されていなかった。

本書は、外伝をのぞくと第一作目。 

 

普通の女子高生・中島陽子の日常が、ある悪夢を出発点にして、非日常の世界に変わってしまう。

いつもと同じように学校生活を送っていたら、突如「ケイキ」という中国風の格好をした金髪の男に、危険が迫っているから逃げろ、といわれる。あまりにも唐突すぎて、茫然としていると、悪夢にでてきた異形の獣が実際に目の前に現れて襲いかかってきた。異形の獣たちの襲来をさけるために、地図にない、異世界の国に逃げ込むが、異形の獣に襲撃されて、陽子を守ろうとしていたケイキらといきなりはぐれてしまう。

陽子が放り出されたのは、日本語ですらない完全な異世界で、おだやかな風景とは別に、神仙や妖魔、半獣の人間などが混在している。その名のとおり、十二の国があり、絶対的な王制がしかれていた。十二の国には、それぞれ神獣・麒麟が存在し、麒麟が直感で選んだ人間が王になり、妖魔を治めて怪異を鎮め、国を治めている。王は、神獣・麒麟と契約をかわすことで、ほぼ神と等しい力を手に入れるが、神話に語られる、天帝の天意に沿った形で国を治めることが求められる。王が天意から外れた政治をすると、麒麟が死に、麒麟が死ぬと王の契約も失われて、ともに死に、国が荒廃してしまう。

陽子が流された国・巧国は、王が外道の政治をし、隣の慶国には王がおらず、かわりに偽の王が即位をして、国が荒廃していた。

陽子は荒んだ国の中を放浪することで、人間の絶望を知り、妖魔に襲撃され、疑心暗鬼になりながらも孤独な心を温めてくれる優しさがあることを知る。元の世界に帰るために、「ケイキ」を探す旅にでるが、そこで知ったのは衝撃的な事実だった。

少女の成長過程を通じて語られる一大叙事詩。