『黄色いチューリップの数式 √-15をイメージすると』バリー・メイザー著・アーティストハウス

優れた本は、優れた質問に支えられている。

「数学においては偽善的行為は不可能だ」といったアンリ・ベール(後のスタンダール)は14歳のとき、負の数かける負の数がなぜ正の数になるかわからなかった。誰に聞いても、「そう決まっている」と答えるだけで、なぜ正の数になるかは説明ができなかった。

数学の数式で当たり前のように使う記号、a,b,c,やx,y,zって何故、x,y,zなのか?

こうした素朴な、あるいは数学の根本に迫った疑問を読者と一緒に丁寧に読み解きながら、虚数をイメージしていく。

虚数というのは簡単にいうと、非現実の数のことである。

ピタゴラス学派の人々は、√2を分数、つまり整数の比であらわすことは不可能であることをしっていた。かの教団にとって、宇宙は自然数によって形づくられているということになっていたから、この事実は彼らにとって致命傷だった。実際にこの事実を外部にもらした人間は罰として水の中に沈めて殺していた。彼らの教義を守るために、である。

虚数をイメージするための方法は二つある。

 

「第1に、数を「変形」として理解し、

 第2に、その変形を視覚化する。」

 

ガルシア・マルケスは10代のとき、カフカの『変身』をはじめて読み、こうした書き方が「許されている」ことに文字どおり、椅子から転げ落ちるような衝撃を受けた。

想像力を拡張するとき、それは破壊的な痛みと衝撃を伴う。

心理学者によれば、五ヶ月の赤ちゃんですら、1+1と2-1の違いがわかるという。

こういう本を高校生の時分に読んでいたりしたら、人生がかわっていたかもしれない。

本書の題は、詩人・ジョン・アシュベリーの散文詩

 

「たとえばチューリップの黄色は、一瞬だけ輝く。それが消えた後、想像の産物でも自己暗示でもなかったことを我々は確信できるが、同時にそれは失われた記憶のように無用になる。」(『それが何であろうが、あなたがどこにいようが』)

 

に由来。