『図書館戦争』有川浩著・メディアワークス

大学で図書館司書の講習を受けていた時(2006年)に、話題になっていた一冊。つまり四年前の話題の本を読んでしまった。当時の先生連がいっていたのは、図書館憲章をよくぞ、ここまでエンタメにもってきた、ということで一致していたと記憶する。

今更だけど、よくできている。図書館の自由に関する宣言が、章仕立てになっていて、可笑しい。

コンセプトは、……「月9連ドラ風で一発GO!」。

 

昭和最終年度に、公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締る法律として「メディア良化法」が成立し、恣意的な検閲が合法化され裁量権が執行機関・良化特務機関に委ねられるようになった。

つまり、検閲の基準が執行者の恣意で判断される、はなはだ本屋にとっては「ipad」なみに背筋が凍る社会がやってきた。

「検閲図書」自体を買うことは違法ではないのだが、良化特務機関は、問題図書を自由に没収できる権利をもっていた。主人公の笠原郁が十年ぶりに出版された童話の完結巻を買おうと本屋にいくと、だしぬけに現れた良化特務機関によって没収されてしまった。そこに現れたのが、ひとりの青年で内懐から手帳を掲げると、

「こちらは関東図書隊だ! それらの書籍は図書館法第三十条に基づく資料収集権と三等図書正の執行権を以って、図書館法施行令に定めるところの見計らい図書とすることを宣言する!」

笠原は、高らかに宣言するその人の背中をみて、思った。

正義の味方だ、と。

時代は、正化31年(平成とともに時代の元号候補にあげられていた)。

笠原は「メディア良化法」の検閲権に対抗する勢力として誕生した通称「図書館の自由法」。

良化特務機関と武装した図書館が、激突する近未来SF長編シリーズ。

登場人物は、脊髄で物を考える傾向がある、本を愛する熱血バカ、笠原郁。

「選ぶべきものを選ぶときに選び方を躊躇する奴は口先だ」という、図書館協会の会長の息子にして、高所恐怖症のエリート、手塚。

「正論は正しい、だが正論を武器にする奴は正しくない」と笠原や手塚の新米図書隊員の教育係をかねる、名言製造機、堂上。

笑う正論の異名をもつ、クールな教官、小牧。不良中年、玄田など個性的なキャラクターが愉しい。

設定もしっかりしていて、日野図書館の歴史的立ち位置などをふまえつつ、実際に起こったオウム事件のときの図書館利用者情報の提供などをいかした事件が、物語に奥行きを与えている。