『獣の奏者 1』上橋菜穂子著・講談社 青い鳥文庫

「守り人」シリーズの、上橋菜穂子のハイファンタジー小説。

ハイファンタジーはローファンタジーと区別される。かいつまんでいうと、ハイファンタジーは異世界の物語で、ローファンタジーは現実の世界に魔法やら魔法使い、妖精などが現れてスパイスをきかせる物語。作家によっては、ローファンタジーを「エブリディ・マジック」とよんだりもする。階層化して使い分けている人もいるので厳密な区分は不明。

 

主人公は10歳の少女エリン。

大公のおさめる国では、龍のような蛇、「闘蛇」が飼育されていて、生物兵器として利用されていた。「闘蛇」は矢を通さぬ堅いウロコをまとっていて、戦争時に圧倒的な兵器として活躍したが、その生態は謎につつまれていて、ある特殊な笛の音でしかコントロールできなかった。

エリンの母親は、<アォー・ロゥ>、すなわち「戒め」を「守る」と名乗る特殊な力をもった一族出身で、獣ノ医術に通じていたため、「闘蛇」のなかでももっとも優秀な「牙」の世話係をつとめていたが、ある日、「牙」たちがいっせいに死んでしまう。

村の長老たちは管理責任を逃れるため、罪を母親一人になすりつけて、「闘蛇の裁き」というもっとも恐ろしい死刑に処して殺そうとするが、その話を立ち聞きしたエリンが母親を助けようと、野生の闘蛇の巣である「ラゴゥの沼」に飛び込むと、母親は最後の力をふりしぼって、<アォー・ロゥ>の民の最大の戒めの一つであった禁忌<操者ノ技>を使い、エリンをたすけて、自分はそのまま「闘蛇」の餌になって死ぬ。闘蛇を操ることが大罪であることをささやいて。

<操者ノ技>は闘蛇の秘密の根幹に関ることで、ここから物語は堰をきったように流れ始める。

<操者ノ技>で一命ととりとめたエリンは、隣国の、蜂飼いのジョウンにひろわれると健康を取り戻し、闘蛇を自在に操る王獣の存在を知り、闘蛇の謎に一歩踏み出していく。