『部下を定時に帰す「仕事術」 「最短距離」で「成果」を出すリーダーの知恵』佐々木 常夫著・WAVE出版

著者は、いわずと知れたワーク・ライフ・バランスのシンボル的存在で、すべての、育児、家事、妻の看病をこなすために、毎日「6時」に退社する必要があり、そのために編み出されたタイムマネジメントの極意の数々が開陳されている。

ハロルド・ジェニーンは、「本は初めから終わりへと読む。ビジネスの経営は終わりから始めてそこへ到達する方策を探る」(『プロフェッショナルマネージャー』)という。つまり、経営者は結果がすべてということで、どういう結果を出したいのかを、考えてから仕事をはじめることが結果につながるという。

あるビジネスコンサルタントの分析によれば、1年で仕事を達成できるつもりの仕事のうち、半分を達成できた人は3割だ、という。つまり、仕事が結果につながっていない。

では、仕事を結果にするのを阻害している要因とは何か? を具体的に洗い出してみると、上司の指示のあいまいさだったり、部下の思い込みを確認しないことが、計画的に仕事をしないための多くのロスになっていることが明らかになる。

長時間労働は「プロ意識」「羞恥心」の欠如といいきり、「時間予算」という考え方を徹底することで解決する。「時間予算」とは、自分が、真に使える時間が30%しかない、という意識で、残された時間の7割は使えないから、そこをいかにやりくりするかを考えてから行動する、ということ。

「ビジネスは予測のゲームである」といい、仕事ができるかできないかは、「能力の差」よりも「仕事のやり方」の差であるという。

その思考は日常生活まで徹底されており、鬱病の妻のカルテをデータ化し、初診の医師でも間違いなく理解できるように常備しているのは驚きを通りこして唖然としたけれど、たとえば、毎日、昼食をとるのは変わらないのに、なぜ、12時に出かけるという愚かなことをするのか? 少し早く行動することで、30~40分の時間を稼げるなら迷わず実行し、効率的に人に伝えようとするなら「口頭」より「文書」のほうが早いなど、のビジネスの基礎から出世の仕方、すなわち、上役との会話は「結論まっしぐら」でいけ、や「いつもきちんと挨拶する」べしにまで及ぶ。

礼儀正さだけで役員になることは可能である、とまでいいきり、その理由は、役員とは会社のリーダーであり、リーダーというのは幼稚園のときに教わったことをきちんとできる人のことだ、とまで、いいきるのは誠にすがすがしい。多分、これは本当のことだと思う。

また、仕事にも「パレートの法則」があるという。

「パレートの法則」は、主として経済学で使われる用語で、「富の8割は2割の人に帰属する」という「8割2割の法則」のこと。これを、「重要な仕事2割をやれば、その人のかかえる仕事の8割が達成できる」というのだ。

効果的な仕事のすすめかたとして、まず仕事の俯瞰図を大きな紙にかく。

大きな紙にかくことで、6~8ページに渡る資料を一望できるようにし、〆切は「間際シンドロームの大損」に備えて少し早めに設定し、終わった仕事をしばらく寝かせて、付加価値をつけられる可能性を検討する。

まさに、「仕事は終わったところから始まる」で、仕事の鬼である。

職種にもよるが、会社の仕事の大半は、同じことの繰り返しである。同じことの繰り返しであるならば、積み重ねられてきた先輩の仕事に、工夫して人よりちょっとだけ優れたことをすれば、それは優れたイノベーションたりうる。つまり、「書庫」にこそ答えがある。優れたイミテーションを積み重ねた先に、優れたイノベーションはうまれてくるというのだ。

どきっとしたのは、批判精神なき読書は有害、という一節で、多読家に仕事のできる人は少ない、という。

核心をついていると思った次第。