さようなら、阿佐ヶ谷!!

ラルフ・ウォルドー・エマソンは、「人生には、両親や恋人、情熱的な経験と同じ位置を占める本がある。」といっている。引越しの準備のために、本をしばっていると、同じ本が出てきたり、学生時代に一生懸命書き込みをしながら読んだ本や、古本を集める楽しさを教えてくれた本なんかが、若干湿った状態で発掘されて、思わず手がとまってしまう。本は一度、平積みしてしまうと、あとは江戸時代の城下町のように、とぐろを巻くようにどんどん円周が大きくなって、中心に近づけなくなってしまう。

片付けのプロフェッショナルにいわせると、わたしはど真ん中の過去執着型であるらしく、いわゆるガラクタの来歴を一々説明することができる。必要か、不要か、ではなくて、そこに物語があるかどうか、というのがわたしの物との付き合い方であるらしい。それを根こそぎ、今日捨てる。でも、本だけはどうしても手放せない。

千冊とかくと単に二文字だけれど、これを縛るとなると容易にはいかない。50メートルの紐をつかいきっても、まだ三分の一に達しない。これを全部、捨ててしまったら、どれだけせいせいするか、と脳裏をよぎることもあるが、そうした甘言にはまどわされないのである。