『現代歌人文庫 春日井建歌集』国文社

「夜学より帰れば母は天窓の光に濡れて髪洗ひゐつ」

 

「香水が体臭にまじる朝の気に短編ほどの眠りをねむる」

 

「青空を冠りし馬や身ぶるひて排泄せしは死の列のなか」

 

肉欲、というか性、そして生をここまで清新で透明に書き上げた歌人は他にはいないのではないか。詩歌の味わいとして青臭さというのはあってもいいと思うけれど、ここまでつきぬけて透明だとなんだかショックが大きい。

三島由紀夫は春日井建の歌集への序文で、19歳のときに頼朝の挙兵をきいた定家が歴史的な一句「紅旗征戎非吾事」を詠んだことになぞらえて、「現代はいろんな点で新古今集の時代に似てをり、われわれは一人の若い定家を持つた」と書いている。

わたしは詩の読者であっても、短歌の読者ではなかった。けれど、短歌は詩である。永い付き合いになりそうだ。