『うろつき夜太』柴田錬三郎著・集英社文庫

「私は、この物語では、従来の小説のパターンを破ることに思考を多く費して来たが(そして、それはかなり成功した、といささか自負しているが)」

 

と著者がいうように、斬新すぎる小説。

著者の分身、眠狂四郎も登場すれば、著者が主人公の夜太と会話して、ストーリーの相談をしたり、著者がギャンブルをやったドキュメンタリーが挿入されたり、締切ぎりぎりまで原稿が書けず、編集者は印刷所で刷り上がるまで原稿を読むことはないとの判断から、なぜ書けなかったのかを、小説のかわりに書き上げてみたり、一章の大半が

「……」

「………」

で終わってしまったりする。

柴田錬三郎の読者でなければ、途中で本を閉じてしまうのだろうが、不思議な読後感が残る小説でした。

はじめて柴田小説を読む人には、眠狂四郎シリーズか、『赤の影法師』が断然面白いと思いますが、未読の方は、けれん味たっぷりの読後感をどうぞ。

残念だったのは、この小説の連載についていた、横尾忠則の挿絵が文庫版から割愛されていること。作中でも言及されているので、これは一緒に読みたかった。