2013年

3月

31日

『古本暮らし』荻原魚雷著・晶文社

短いコラムの中で、この人読んでるなー、と実感させる文章を書くのは容易なことではありません。さらにいえば、ブックガイドで、一冊の本を読ませるだけでなく、さらに数十冊の本を読ませるのは、芸だと思います。本書は、その芸を十二分に発揮した稀有な一冊です。

たとえば、こんな感じに書いてあります。 

 

「読まされたなあ、これは。(略)登場人物が、芥川龍之介と菊池寛である。おもしろくないわけがない。しかも二人の才能への嫉妬をかくさない小島政二郎。端正な文章なのに内容はヤケクソなのである」

 

この本の名前は、小島政二郎著の『眼中の人』。

 

現在、自分のことを不遇だと思っている、または、表面上、仲良しのふりをしているが、内心では嫉妬している友人がいる人におすすめだと書いていますが、そんなことすら忘れさせてしまうぐらいぶっちぎりで面白い。

魚雷さんの文章がこれまたとてもいい。私がいいなと思ったのは、文章の速度です。一見ゆるくみえるのに、沁みる。短く簡潔に、一行で決めるのも、かっこいいのですが、魚雷さんの文章はどこか泰然としている。かと思っていたら、いきなりズバンと直球を投げてくる。

 

「読書は、競争ではない。好きな作家の本が短期間にそろえられることは、それだけ本を見つける喜びも薄れる。もちろんずっと探しているのに、入手できない本はいくらでもある。でもその見つからない本は、是が非でも読みたい本ではない。なんとなく、見つからない。あるいは値段が高くて買えないという本にすぎない。」

 

こういう風に書かれたら、やっぱりハマってしまいます。