『桜のいのち庭のこころ』佐野藤右衛門著・草思社

京都は山越にある植藤の十六代目佐野藤右衛門邸の桜を見に行ってきました。

一般に公開されているので、営業時間内であれば、桜が咲き誇る園内を誰でも自由に散策することができます。

花見客の喧騒を離れて、数千本の桜を自由にゆっくり観られるというのは、贅沢です。

庭園内にはいろんな種類の桜が植わっていて、それぞれの桜を長椅子に腰かけて、じっくりと眺めることができます。桜と緑とのコントラストが抜群で、ぼーっとしながら、弁当を食べている人もいました。(一応、飲食お断りにもかかわらず、仕出し屋さんがいる怪)

 

桜は横から見ても十分美しいと思っていましたが、藤右衛門氏によると、

 

「桜は全部下を向いて咲くんです。ですから中へ入り込んで見て、初めて桜も喜ぶんです。横から見ては、全然あきませんものね。そやから、どんな昔の絵を見ても、みんな、幹のまわりで花見をしてますやろ。花が覆いかぶさってくれるのやから、そこへ入ればいいんです。

 ゴザをしいて、女の膝枕でごろーんと上向いて寝てたら、あれほどええもんはないでっせ」

 

というわけで、幹の下で寝転んで空を見上げたら、一変。

京都の円山公園と同じ桜だけあって、横から見ても十分に迫力はありますが、やっぱり寝転んで見るのには叶わない。勉強になりました。

 

桜が花を咲かすのが、桜の一年で最後の仕事というのにも驚きましたが、蒙をひらかれたのは、桜が満月に向かって咲くということ。

 

「やっぱり桜は月に引かれるというのか、自然の営みには月が大きくかかわっているみたいですな。ですから桜がいつごろ咲くかは暦を見ていたらわかります。満月に向かって咲きよるんです。」

 

ほとんど自然とともに人間が生きていくための名言集みたいな内容ですが、図と写真つきの「桜の接ぎ方」なんかもしっかりと紹介されているので、辞書のように使えます。

私が読んだのは、草思社版ですが、携帯に便利な文庫版をおすすめします。