books335『夏彦・七平の十八番づくし』山本夏彦・山本七平・中公文庫

対談集です。

山本夏彦の『ダメの人』の中に、しゃれがわかる人としゃれを言う人は別人で、言う人が二人いないと応酬はできないから、しゃれは急速に滅びた、と書いていますが、これは博覧強記の話を読むときも同じで、二人の話を読んでるだけで、

 

「なん十年来、棚に立ちつくしていた本たちは、いっせいに振りむいて、まだ死んでいない表情を示すのである。そして私を無縁の書生と知れば、再びもとに復するけれど、たまには互いに求めていたとわかって、百年の歳月をとびこえることもあるのである。」(『日常茶飯事』山本夏彦著)

 

という気持ちになります。

この対談集を読むたびに、読もうと思ってメモするのは、徳富蘆花の『富士』と、三好京三の『子育てごっこ』。

『子育てごっこ』は、山本七平の遠縁にあたる、奇人、山田吉彦(ペンネームは、きだ・みのる)の晩年を描いた小説。きだ・みのるの『気違い部落周遊紀行』の読者としては、これは是非読まないといけない本だと思いつつ、いつもメモしたことを忘れてしまう。残念な記憶力ですが、本書の中には活字にまつわる話だけではなく、下谷の広徳寺に、柳生飛騨守宗冬の入れ歯が残っているというような話や、徳川時代に開発されたタクアンをたたく道具(?)という、地味にすごい話が埋もれています。

話題も広く、新聞、広告、忠臣蔵、文学、女、言葉、賞、というように、読み応えがあり、さらにすごいのは、読者を笑わせてしまうこと。

山本夏彦は『笑わぬでもなし』に、

 

「読者は作者の遺体が、つめたくなると同時に去るから、蚤に似ている。」

 

と書いていますが、さて、本当のところはどうでしょう。

引用づくしで恐縮ですが、是非本書をお読みくださいまし。