books335『絶望名人 カフカの人生論』フランツ・カフカ著 頭木弘樹編訳・飛鳥新社

今まで読んだカフカの本の中で、もっとも短く、かつ面白い一冊です。

一見、名言集ですが、内容はおそろしくネガティブ。

 

「将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。

 将来にむかってつまずくこと、これはできます。

 いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。」

 

を筆頭に、

 

「ちょっとした散歩をしただけで、

 ほとんど三日間というもの、

 疲れのために何もできませんでした。」

 

という虚弱ぶりや、

 

「ぼくはひとりで部屋にいなければならない。

 床の上に寝ていればベッドから落ちることがないのと同じように、

 ひとりでいれば何事も起こらない。」

 

などのひきこもり発言が、膨大な資料の中からピックアップされています。

カフカは、エリアス・カネッティやミラン・クンデラ、サルトルにナボコフ、そして、ウディ・アレンもが絶大な賛辞を贈る偉大な文学者ですが、そんなことを微塵も思わせないネガティブぶりが、一本の柱のように本書を貫いています。

編訳者の頭木弘樹は、

 

「彼は何事にも成功しません。失敗から何も学ばず、つねに失敗し続けます。

 彼は生きている間、作家としては認められず、普通のサラリーマンでした。

 (略)

 彼の書いた長編小説はすべて途中で行き詰まり、未完です。

 (略)

 そして、彼の日記やノートは、日常の愚痴で満ちています。

 それも、「世界が……」「国が……」「政治が……」というような大きな話ではありません。

 日常生活の愚痴ばかりです。「父が……」「仕事が……」「胃が……」「睡眠が……」。」

 

とカフカを描いています。途中割愛してしまいましたが、これは是非全文読んでみてください。カフカのイメージを一変させる、実に見事な本だと思います。

私は、本書を読んで、カフカの全集に挑戦することを決意いたしました。読みやすいだけではなく、名著だと思います。