2013年

8月

08日

books335『聖母の曲芸師』堀口大學訳 横田稔装画 書肆山田

学生時代に堀口大學の詩を読みはじめて、一行の言葉の力強さにうたれました。堀口大學というと、『月下の一群』などの訳詩が有名ですが、自身の言葉で簡潔に綴られた詩のほうがしびれます。たとえば、「定義」という詩は、

 

「詩はそんなものではない」

 

というたった一行だけの言葉です。「自戒」に書かれているのは、

 

「詩人とは

 ひとりで

 ぢつと

 在ることだ」

 

という言葉。胸にまっすぐ突き刺さるような詩だけではなくて、

 

「こけしは

 なんで

 かわいいか

 

 思う

 おもいを

 言わぬから」

 

という、短く愛敬のある「こけし」という詩なんかもあって、読めば読むほど堀口大學の世界に引き込まれました。幸い、東京には古書店がたくさんあり、おそろしいことにお金さえあれば、ありとあらゆる本が手に入ってしまうので注意が必要ですが、本書は白い装丁で有名な書肆山田という出版社が、堀口大學訳の短編を全三冊で編集したうちの第三巻目です。

今まで、たくさんの本を手に取り、また読んできたはずですが、本の美しさだけで記憶しているのは、この一冊だけです。

既に絶版しておりますので、新しく手に入れることはできませんが、もし古本屋でみかけたら、必ず頁をめくってみてください。願わくば、復刊していただきたいと心から思っています。